「どーせ合成でもして、ぼくを見せ物にする気なんでしょ!」
ソファに座らされているピーターも負けじと言い放った。
逃げられないように手首は縛られていたけどね。
怖がる様子もなく気丈なピーター。
その様子を見つめるフランツの様子は楽しげだった。
「そんな馬鹿なことはしない。写真だけでは世間は信じないからね」
「……じゃあどうするの?」
いぶかしげにフランツを見上げるピーター。
フランツは粘着くような独特な声で答える。
「君には自力で飛んでもらうよ。だって空を飛べると主張しているのは君自身だろう? いや、それが嘘だとしても君には飛んでもらう。我が研究所の技術を尽くして――君を“空飛ぶ少年”に改良してあげるのさ!」
写真は君の改良前の姿を保存するためだ、とフランツは怪しい笑い声を漏らした。
「か、改良って……」
ピーターの瞳は湿ってきていた。声も消えるようにか細い。
いままで強がっていた少年が急に怯える素振りを見せたんで、フランツは愉快でたまらなかった。
「君を実験に使うんだ! 私が開発した、空中飛行のクスリのね」
フランツの声が高々と響いた、その時。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)