ピーターには馴染みの無い建物だった。
だって街の家々はレンガ造りや木造がほとんどなのに、この研究所はもっと頑丈そうな分厚く白い壁で覆われていたんだもの。
「確保に成功した」
ひとりの研究員がそう言うと白い両開きの入り口が開き、ピーターは研究員の腕から降ろされて建物に入ったよ。
建物のなかもとにかく真っ白でさ。
奥には廊下がたくさん見えたし階段もあるようだから、広いんだと思うよ。
無駄なものは置いていないようで、殺風景な光景だった。
「やあ、君がピーター・バッハマンくん。空を飛べる少年だね」
ポカンとしたままのピーターにそう声が掛けられた時、ようやく周りを囲っていた研究員たちが去っていった。
代わりに眼鏡をかけた金髪の男がやってきてね。歳は40代といったところだろうか。
「どうせぼくが空を飛べる事を信じてないくせに!」
ピーターははっきり言ってやった。
「そんなことない。君の能力には期待しているんだ。悪い話じゃない。お姉さんにもお金が入るんだからさ!」
金髪の研究員は、そう声高々に笑ったんだ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)