「研究員も暇なもんだね。空が飛べるなんて、嘘っぱちかも知れないのにさ」
でしょ?とカールが言った。皮肉そうな笑みを浮かべてさ。
「いえ、研究員も空が飛べるなんて信じていないんです」
呟かれたウェンディの言葉に、3人は口を揃えて説明を求めた。
「彼らはピーターを“空飛ぶ少年”として、見せ物にする気なんです! きっと本当に飛んでるように見せかけるつもりなんですわ。それくらいの技術はあるでしょうし」
研究員ってのは、時に傲慢なのだとアリスは学んだ。それにしても利用されようとしているピーターが可哀想だ。
もちろんアリス達もピーターが“空を飛べる”なんて、信じてはいないけどね。
「研究所はピーターを預けてくれれば、大金を出すと言っているんです」
するとイヴァンが言った。
「空を飛べるフリくらいで大金が手に入るなら、わざと利用されるのが利口だと思うがな」
全く、情が薄いというか、馬鹿な男だよ。

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