イヴァンがため息混じりに答えてやる。
「この国の妃と王女殺しの罪で追われている。言うまでもなく誤解だがな」
「えっ、無罪なのに!」
純粋なピーターは無罪なのに追われてる、ってことにひどく驚いたみたい。
「俺は殺していない。王女が母親の妃を殺して、自殺したんだ」
へえ、とピーターが曖昧に答えた。続けて言う。
「僕も追われてるんだ、一緒だね」
すぐにアリスが聞いた。
「追われているって? 誰に?」
「研究所の人たち」
ピーターがそう言ったあと、家の古い扉がギイと開いて人が入って来る。
「ただいまピーター。……あら、お客さん?」
少女だった。少女はピーターと同じ栗色の髪をおさげにして垂らしていてね。
ピーターと似た優しげな垂れ目の持ち主でさ。
やっぱりみすぼらしい布切れの恰好をして、小さなパンを抱えていたんだ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.775/img/book/genre1.png)