薔薇とアリスと2人の王子


 イヴァンがため息混じりに答えてやる。

「この国の妃と王女殺しの罪で追われている。言うまでもなく誤解だがな」
「えっ、無罪なのに!」

 純粋なピーターは無罪なのに追われてる、ってことにひどく驚いたみたい。

「俺は殺していない。王女が母親の妃を殺して、自殺したんだ」

 へえ、とピーターが曖昧に答えた。続けて言う。

「僕も追われてるんだ、一緒だね」

 すぐにアリスが聞いた。

「追われているって? 誰に?」
「研究所の人たち」

 ピーターがそう言ったあと、家の古い扉がギイと開いて人が入って来る。

「ただいまピーター。……あら、お客さん?」

 少女だった。少女はピーターと同じ栗色の髪をおさげにして垂らしていてね。
 ピーターと似た優しげな垂れ目の持ち主でさ。
 やっぱりみすぼらしい布切れの恰好をして、小さなパンを抱えていたんだ。