一同がイヴァンを見ると、彼は眉間にしわを寄せていてね。
吐き捨てるように言った。
「冗談じゃない……!こういうのはカールの仕事だ。お前も弟王子だろ!」
「僕らの星では弟王子は権限を持たないでしょ」
う、と口を結ぶイヴァン。
弟に比べて口が達者ではない兄は、返す言葉がなくなってしまったんだ。
「ほら早く。あんた男でしょ!? 初めてじゃないんだから、ちゃっちゃとやんなさいよ」
「簡単に言うな馬鹿者!」
「兄さん、早くキスして下さい。こんな美人とキス出来るんだからいいじゃないですか」
アリスとカールはそう言うし、周りの小人達もイヴァンが頼りとばかりに懇願の眼差しで彼を見つめている。
ついに折れたイヴァンが、重い重いため息を吐いてね。
横たわるシャルロッテに近づき、隣に膝をつく。
その時のイヴァンの顔といえば、まるで汚物を見つめているように歪んでいてね。
でも傍から見ればまさに美しい王子様とお姫様。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)