「そうよ、簡単じゃない。ハンスAがシャルロッテにキスすればいいのね」
そんなアリスの提案は、ハンスCによってかき消されてしまったんだ。
「駄目です。Aはただの木こり。王子様じゃありません。愛する人よりも、王子様という条件が重要なのです」
「なによそれ!」
しばらく皆であれこれ考えていたけど、カールが嘲笑したので、一同は顔をあげた。
「皆の頭もたいした事ないなぁ。いるじゃないか公式に認められた王子様が!……ねっ、兄さん」
「―――は?」
満面の笑みで兄の肩を叩くカール。
戸惑うイヴァンをよそに、周りは大いに盛り上がってしまったよ。
「そうよ! あなたがいたじゃない。こんなのでも身分は王子様だものね。さっ、早くシャルロッテにキスして」
ぐい、とイヴァンの背を押すアリス。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)