薔薇とアリスと2人の王子


「そうよ、簡単じゃない。ハンスAがシャルロッテにキスすればいいのね」

 そんなアリスの提案は、ハンスCによってかき消されてしまったんだ。

「駄目です。Aはただの木こり。王子様じゃありません。愛する人よりも、王子様という条件が重要なのです」
「なによそれ!」

 しばらく皆であれこれ考えていたけど、カールが嘲笑したので、一同は顔をあげた。

「皆の頭もたいした事ないなぁ。いるじゃないか公式に認められた王子様が!……ねっ、兄さん」
「―――は?」

 満面の笑みで兄の肩を叩くカール。
 戸惑うイヴァンをよそに、周りは大いに盛り上がってしまったよ。

「そうよ! あなたがいたじゃない。こんなのでも身分は王子様だものね。さっ、早くシャルロッテにキスして」

 ぐい、とイヴァンの背を押すアリス。