小屋を出て扉を閉めたとき、イヴァンがふと立ち止まった。
「兄さん? どうしたんです?」
「今、シャルロッテの声が聞こえた気がする」
アリスとカールが揃って顔を見合わせる。
するとイヴァンがたぶんこの小屋の裏だ、と告げた。
彼がそう言ったんで、3人で小屋の裏に回る。ここは毒林檎を捨てた場所だ。
嫌な予感がしたのはアリスだけではない。
「静かに。シャルロッテの他に誰かいる」
カールがそう言ったので、3人は壁に隠れてそっと裏を覗いた。
3人の人間が揃って覗き見してるんでもの、はたから見れば怪しい事このうえないよ。
「ハンスゥ~、いつになったら、子供作る気になるのぉ~?」
覗き見た先。
なんと、薪の束の上に腰かけたシャルロッテが、小さなハンスを膝に抱きかかえていたんだ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)