薔薇とアリスと2人の王子


 小屋を出て扉を閉めたとき、イヴァンがふと立ち止まった。

「兄さん? どうしたんです?」
「今、シャルロッテの声が聞こえた気がする」

 アリスとカールが揃って顔を見合わせる。
 するとイヴァンがたぶんこの小屋の裏だ、と告げた。
 彼がそう言ったんで、3人で小屋の裏に回る。ここは毒林檎を捨てた場所だ。

 嫌な予感がしたのはアリスだけではない。

「静かに。シャルロッテの他に誰かいる」

 カールがそう言ったので、3人は壁に隠れてそっと裏を覗いた。
 3人の人間が揃って覗き見してるんでもの、はたから見れば怪しい事このうえないよ。

「ハンスゥ~、いつになったら、子供作る気になるのぉ~?」

 覗き見た先。
 なんと、薪の束の上に腰かけたシャルロッテが、小さなハンスを膝に抱きかかえていたんだ。