薔薇とアリスと2人の王子


「この森を抜けた先に、“ペンドラ”っていう国があるんですけどぉ~。わたし、その国の王女だったんです」
「お、お姫様ぁ!?」
「はい。でもぉ、お母様がわたしに嫉妬したらしくって、わたしを殺そうとしてきたんです。だから国から逃げてきたんです~」

 明るく言ったようだったが、アリスが見た彼女の横顔はすこし悲しげだったよ。

「そうだったの……。まだ小さいのに、大変だったのね」
「あ~!もうわたし子供じゃありません~! もう17歳ですよぉ~!」
「へ?17歳!?」

 驚いたことに、シャルロッテは17歳だった。カールのひとつ下だよ。
 人は見かけによらないのだな、とアリスは感慨深く思ったけど、シャルロッテは話し方や動作も幼い感じがしたんで、告げられた年齢にいつまでも納得がいかなかった。

「私13歳よ……4歳も年上だったのね…」
「わたしお姉さんですね~!」

 そう無垢な瞳で笑う美しい少女を見て、母親に殺されそうになった過去をアリスは哀れんだ。
 アリス自身もなかなか辛い経験をしたけど、身内に殺されかけるなんてどんな気分なんだろう。
 やがてシチューにいれる具もだいぶ切り終えると、シャルロッテは鍋を用意していた。

「お城で豪華な暮らしはできなくても、わたしは今が幸せなんです~。だってハンスがいるから!」
「……どのハンス?A?B?C?」
「Aですよぉ~。Aだけはそのまま呼ぶって言ったじゃないですか~!」