「とんだ災難だな」
イヴァンがふてぶてしく椅子に腰かけると、野獣に言った。
「今更何だ?」
「……あの女も、しばらくしたら“大切なもの”に気付くだろう」
脈拍が感じられない彼の言葉に野獣は首をかしげたけど、何も言わなかった。
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一方、クララの部屋へやって来たアリスは驚いた。部屋に彼女がいないんだからね。
仕方なしに、その場にいたカールに聞いてみることにしたよ。
「クララさんはどこ?」
彼は部屋のベッドで呑気に読書なんてしててさ。アリスの言葉に寝転んでいた身体を起こす。
「野獣を殺しにいったよ」
「は?」
「ついさっき」
アリスは飛び上がって、大急ぎで2階へと駆けていった。後ろからカールもついて来る。
事態は大変な事になりそうだ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)