さっそくアリスは、野獣が人間に戻る方法を未だ見つけられていない事を詫びたよ。
それを聞いた時の野獣の絶望した顔といったら!
「な、なんて事だー!」
「呪いをかけた魔女も戻る方法くらい教えてくれれば良かったのにね。あ、私たちあなたを野獣にした魔女に会ったことあるのよ。ゾフィーって言ってすごく気色悪い……」
野獣は聞いちゃいない。頭を抱えてしゃがみ込んでいる。
クララには嫌われているし、死にそうだし、もう散々だよ。
「よし、私がクララに話してみるわ。あなたの事誤解してるみたいだし」
野獣1人じゃどうしようも出来ないと判断したアリスが気を利かせてやることにする。
その足で食堂に向かうアリス。カールと同じく、人の恋路は気になる性分らしいよ。
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食堂に向かうと、クララは1人でテーブルに座りパンを食べていた。
「クララさん!」
「あら、アリスさん」
「ちょっといいかしら?」
アリスは一言そう言って、クララのいる大きなテーブルに向かって、彼女の隣の椅子に腰かけた。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)