バコン、と乱暴に部屋の扉を閉める。玄関ホールにも天井の窓から昇り始めた朝日の光が注いでいた。
「全く、あの馬鹿兄弟と旅をはじめてから怒ってばっかだわ」
朝から埃っぽい屋敷にいるのは嫌だったから外に出ようとしたら、玄関のところに野獣がいてさ。
よく見れば側にはクララもいる。野獣と並ぶとクララがすごく小さく見えた。
「だから何で私に構うのよ! 食べるなら食べる、逃がすなら逃してよ!」
早朝にも関わらず今日もクララと野獣は絶好調だ。
「なんだその口の利き方は! ただ私はお前と晩餐をしたいだけだ!」
「嫌ったら嫌よ! 私は勝手に食料を探させてもらうわ」
そうとう怒っているクララは、ずんずんとキッチンに入っていってしまった。
すぐに後ろからアリスが野獣の腕を引っ張ってやった。野獣は驚いたようで変な鳴き声をあげてさ。
「何よ変な声出して」
「驚かすな。私は女に触れると蕁麻疹が出ると言っただろう」
「そうだったわね……」
この調子じゃあ、クララに逃げられるか殺されるのも時間の問題だと思ったね。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)