そっぽを向いたまま本のページを捲るカール。本はもとからこの部屋にあった古い物だよ。
「あなたって最低の色ボケ男ね。見た目で判断するなんて」
「僕は本能に忠実に生きるのがモットーなんだ」
頭ごなしに怒ってやりたい、アリスはそう思ったね。
でも口ではカールに勝てない気がして、言葉はすぐに引っ込んだよ。
「いいわ、私と王子だけで何とかするから」
「俺も入ってるのか」
「当たり前でしょ! 全く、これだから貴族は! もう今日は寝ましょう、瞼が重くてたまらない」
言うだけ言って、アリスはベッドに潜って早くも寝息を立ててしまってさ。
13歳の少女に貶された兄弟は複雑な気持ちのままソファに横になった。(なにせ、ベッドはアリスが使ってるからね)
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翌日は、埃の膜を張った窓からでも分かるほどの晴天だった。
真っ先に目を覚ましたアリスは、お約束、兄弟を叩き起こすんだ。
「起きなさい、朝よ!」
といってもまだ5時だけどさ。イヴァンは起きないと確信してるんで、カールを起こしにかかる。
「ほら、起きなさい!」
「…………」
「こら! 色ボケ男!」
むずがるだけで、なかなか起きないカールにアリスはおかんむりだ。
昨日の事もあったし、これ以上カールに構うのも面倒だったんでさっさと1人で部屋を出て行ってしまったよ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)