頭を抱えだした野獣に、さすがにアリスも他人事では無くなってきてね。
「大丈夫、方法を考えましょう。私達も今晩考えてみるから」
「カールなら何か知ってるかもしれないな」
「そうね。あの人、無駄に頭いいもの。だから野獣さんまだ諦めないで!」
まだ情けなく眉を下げる野獣に、アリスが元気づけて言ってやった。
野獣はしばらくだんまりだったけど、一言“分かった”とだけ告げると、哀愁を残したまま自室に戻っていったんだ。
「あんな怖い姿でも、なんだか接しているうちに、愛嬌が感じられるわね」
「そうか?」
2人は疲れきった身体を引きずりながら、1階の部屋へと戻っていった。
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「野獣を助ける方法? 僕が知ってるわけないですよ」
これが、事情を話したあとのカールの一言めだ。
眉をひそめるしかめっ面は、なんだか兄に似ている。
「だいたい兄さん達、野獣を追っていったかと思えば……協力するなんて。洗脳されちゃったんですか」
「あなたも野獣と話せば、彼の本当の姿が分かるわよ」
「僕はクララの味方だからね♪」
カールはすっかり美しいクララの肩を持っていて、野獣なんて眼中に無かったんだ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)