晩餐に誘う作戦は失敗だと諦めた野獣はすごすごと、階段で待つアリス達の元に帰っていった。
「だめだった……」
そう肩を落とす野獣。世にも恐ろしい見た目の野獣がしゅんとしている様子はなんだか滑稽だよ。
「そう、手強いわね。そうだ、王子。満月の日まであとどのくらい?」
アリスがイヴァンを見上げる。その視線に答えるようにイヴァンがしばらく考え込むと、言った。
「今日が14日だから……。明日だ」
その言葉にアリスも野獣も耳を疑いたくなったよ。信じられずにアリスが聞き返す。
「明日ですって?本当に?」
「ああ、明日の晩だ」
なんて不運な野獣! せっかく気になる女性が現れたっていうのに自分の命が危ないだなんて。
絶望的な気持ちで野獣が声を落とす。
「そんな……私は明日の晩までに人間に戻らないと死んでしまう……!」

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.786/img/book/genre1.png)