薔薇とアリスと2人の王子

 一方こちらは、扉の向こうの玄関ホールにいる野獣とアリス、イヴァンだ。

「駄目じゃない! あんなに怒鳴ったらいつまでもクララは出てこないわよ」

 アリスが野獣にきつく言った。続いて野獣の脆弱な声。

「ではどうすれば良いのだ……。おい赤毛、教えろ。お前は女関係に長けていそうだ」

 と、イヴァンを指す野獣。
 イヴァンが思いっきり顔を歪めたのは言うまでもないよ。

「寝言は寝て言え。悪いが女なんて大嫌いだ」
「優しく言えばいいだけよ。ほらっもう一回チャレンジ!」

 そんなことで、野獣はもう一度クララの部屋の前に立つ。

「ク、クララ……。その、晩餐に、来ないか」

 たどたどしくも優しく言ったつもりだったけど、あいにく返ってきたのはピシャリとした声だった。

「嫌よ! ベルホルトの時のように、私も食べるつもりなんでしょう!」
「誤解だ! クララ、あの青年は……」
「絶対に出ていかない!」

 ここまで言われちゃあ野獣に返す言葉はなくてね。