薔薇とアリスと2人の王子


 彼の青葉色の目がいつもより爛々といらずらっぽく光っている。

「ある日、私の家に来る予定だったベルホルトがいつまで経っても来なくて………様子を見に家を出たら、」

 そこで言葉を切ると、ゆっくり深呼吸する。クララは続けた。

「すぐ近くの道ばたで、彼のボロボロの衣服があり、彼……ベルホルトは、既に野獣に食べられていた後でした」
「うわぁ、野蛮ですね」

 言いながらもカールは笑顔だ。

「復讐するために私はここへ来たんです。きっかけとなったパパには感謝してるわ」

 へえ、とカールが関心があるんだか分からない返事を返した。
 その時だよ。扉の向こうからけたたましい野獣の声が聞こえたのは。

「クララ! 遅いが晩餐にするぞ、早く出てこい!」

 こんな事をあの声に叫ばれて、誰が出ていくもんか。晩餐だなんて、逆に食べられそうだよ。

「あなたと食事なんて、絶対に嫌よ!」

 クララは扉を隔てた向こうに気丈にもそう言ってやる。そうしたらまた、野獣の声だ。

「なんだと!? それならば、食事を摂らずに餓死するがいい!」

 それで扉を隔てた言い争いは終わったんだ。