薔薇とアリスと2人の王子


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「いいんです? このままじゃあ、いつ家に帰れるか分かりませんよ」

 そのころカールは、1階の(アリス達3人で使っていた部屋とは別だよ)、やっぱりぐちゃぐちゃの部屋にクララといたんだ。
 2人でアンティーク風の細工が施された、古い椅子に座っていた。

「このまま大人しくしているもんですか。今晩中にでも野獣の見ていない隙に逃げ出すつもりよ」

 力強く言うクララ。気が強い、というわけではないけど意思が強いんだ。

「ううん。それだけじゃない。野獣を殺してやるわ。……あの野獣は、私の婚約者を殺したもの!」

 そう吐き捨てるように言ったクララに、カールは説明を求めた。
 クララはまだ激情的に話し出したよ。

「私、一応貴族なんです。ベルホルトという、しがない身分の婚約者がいました。ベルホルトは貧しいらしくて、私の家族からは結婚を反対されてましたけど……」
「それで?」

 人の恋愛話に興味津々のカールだ。