薔薇とアリスと2人の王子


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 野獣は2階の廊下を重い足取りで歩いていてね。足取りが重いのはその身体が大きいだけじゃない。
 その沈んだ背にアリスが声をかけた。

「ね、野獣さん」
「――!? に、2階に来るなと言っただろう!」
「ごめんなさい。クララさんの事、気にしてるみたいだったから」

 クララの名前を出すと、野獣は氷のように固まってしまってね。そわそわと瞳を忙しなく動かしている。なんとも分かりやすい反応だよ。
 ちょっと野獣が愛らしくなった。

「一目惚れでもしたのね?」
「なっ、なっ、そんな事……!」

 大きな身体で狼狽える野獣は、図星だと言っているようなものだよ。
 アリスは好奇心のまま追求を続けた。

「アタックすれば? 彼女はしばらく屋敷にいるんでしょ」
「だ、駄目だ。私は女性のことになると、とてつもなくネガティブになるのだ」
「はあ?」

 ネガティブって何よ、とアリスが野獣に説明を求める。