薔薇とアリスと2人の王子


 今度はイヴァンが野獣に言う。

「なぜ魔女に呪いなんてかけられたんだ。お前はこの国の王子だったんだろう」

 それに応えたのは“ああ…”と野獣の短いため息。

「ある日、城を訪ねてきた女を追い払ってしまったのだ」
「それで?」
「女の正体はこの国の海の魔女で、怒った魔女によってこのような姿にさせられたのだ」

 アリス達はしばらく考えてハッとした。
 この、マエストーソの国の海って、昼間にエルザ達と会ったあの海だよ。
 それじゃあ“海の魔女”って――。

「あのとてつもなく怪しい、ゾフィーとかいう魔女か」
「そうみたいですね」

 あの魔女に呪いをかけられたなんて、3人は野獣に同情したよ。野獣は続ける。

「次の満月までに人間に戻らないと、私は死んでしまう」
「そうなの?」

 と、アリスの驚きの声。

「どうやったら人間の姿に戻れるのか、聞き忘れたから困っているのだ」

 見かけによらず野獣はまぬけなようだよ。
 そういえばいつの間にか、3人は野獣と打ち解けていてさ。3人で遅い食事を摂る話も出てきた。