「む、娘をだと……?」
「そうだ。お前を帰してやるから、すぐに娘を1人寄越せ。娘が来なかったらお前を探し出して娘もろとも食ってやる!」
そう吠えるように野獣が言うと、男はいちもくさんに逃げていった。
果たして約束を守るのか謎だけどね。
「……で、兄さん。いつの間に野獣と仲良くなったんです?」
カールが野獣の後ろに立つイヴァンを睨んで言った。
「仲良く、だと?」
「ええ。あんた食料を探しに行ったはずでしょう」
「途中でこいつに見つかったんだ。そうしたら衝撃的なことを暴露してな」
“衝撃的なことって?”とアリス。野獣に視線を向けると、さっきの威厳はどこへやら。難しい顔をしている。
「赤毛にバレてしまった以上、言うとしよう。私は、こんな姿をしているがもとは人間なのだ」
マジで? とカール。
「マジでだ。魔女の呪いでこうなってしまった」
魔女という言葉にアリスが反応した。だけど“ローライド”の事を聞いても、野獣は知らないと首を振ってね。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)