肖像画、と言われて先ほどの珍しき美術品を見た。
これが何だというのか? イヴァンは視線で野獣に問う。
「やっぱり見てしまったのだな……ああ、私はどうすれば……」
野獣は大きな身体を丸めて、何やら落ち込みだしてね。これにはイヴァンも困ってしまった。
「この肖像画が何だというんだ」
野獣は不釣り合いにも程があるほどに、情けない声で答えたよ。
「わ、私なんだ。その肖像画の王子は……」
はあ?と声を漏らすイヴァン。怯えるように俯く野獣。窓から注ぐ月光がそんな2人を静かに照らしていたよ。
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「上手くいったね。兄さんを騙すじゃんけん大作戦」
「結構汚い手を使ったけどね」
その頃、1階の部屋にいたアリスとカールは、簡単な掃除を終えていた。
懐中時計を見るともう22時を回っていてね。
「王子帰ってこないわね、もう腹ごしらえは諦めて寝ましょう。王子は今ごろ野獣のお腹の中だわ」
「兄さんの分まで生きればいいさ。――あれ?」
カールが気がついたものとは、ベッドの上に置いてあるロサ・アンジェラが入っている小箱だったんだ。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre1.png)