薔薇とアリスと2人の王子


 ふたたび地が震えるような怒声だ。

「そこで何をしていると聞いているんだ!」

 野獣はランプを手に持って、毛で覆われた身体の上にガウンを着ていてね。
 近くで見ると、ほんとうに喋る恐ろしいライオンだった。

「いや、ああ、ちょっと、隠れんぼ中で」
「面白い人間だ。そんな嘘は――」
「……?」

 イヴァンのくだらない嘘に答えたはずの野獣が言葉尻をつぼめたんで、イヴァンは首をかしげた。
 野獣は眉間に寄せていた眉を、急にしゅんと垂れさせた。

「ま、まさか見たのか?」

 “何をだ”と、イヴァンの返事。

「貴様の後ろにある、その肖像画だ!」