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「私たち食べられるんだわ! たいへん、どうしよう! こんな馬鹿王子たちと一緒に死ぬなんて、絶対に嫌!」
適当に選んだ1階の部屋に入るなり、アリスが言ったんだ。
カールがサイドテーブルのランプに灯を点しながら、きょとんとしている。
「何? 新しいギャグ?」
「ばかっ。見た? あの領主の姿! 人間じゃなかったわ。ライオンのような、恐ろしい獣の頭だったわ!」
アリスはすっかり挙動不審になってしまっていて、腰かけたイスが埃まみれだなんて気が付かない。
そうしたらイヴァンが、
「街の婦人が、ここなら泊めてくれると言った理由はまさか」
「野獣が食料として旅人を歓迎するからですって? あは、ばかばかしい!」
能天気なカールの答えだったけどアリスの不安は増すばかりだよ。
「私は一番小さいから安心ね。肉が少ないもの! 王子は赤い髪が不味そうだし、一番美味しいのはきっとカールね。ご愁傷様」
言いながらベッドの埃を払うアリスにカールが苦笑しているとき、イヴァンが大変な事に気がついてさ。
なんとも嫌そうな顔をして言った。
「俺達の食事はどうなる。朝から何も食べていない」
「…………あ」
旅っていうのはこういう時に大変だ。寝床を確保して食料を確保して、の繰り返しだからね。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.777/img/book/genre1.png)