薔薇とアリスと2人の王子


 アリスに次いでカールも腰を上げ、イヴァンと揃ってエルザとルートヴィヒの元に駆け寄ってくる。

「ルートヴィヒが死んだ? どういうこと?」

 と、カール。

「“勘違い”よん。あなた達が恐れていたこと。彼女を追って死んだのよ~」
「そんな! エルザは、人魚に戻るためにわざと死んだのに」

 ルートヴィヒの胸を見ると心臓を抉りだした傷が痛々しかった。
 本当にエルザが死んだと思って、自らの命を絶ったのだ。それを証明する胸の傷は見ていて気持ちの良いものではなかった。

「でも、エルザは人魚に戻せるんでしょ? ルートヴィヒは戻せないの?」
「無理よん。エルザは人間の姿になった人魚だから可能だけど、彼氏は人魚のまま死んだもの~」

 とりあえずはエルザを人魚に戻そうと、ゾフィーは言った。アリス達も同意する。

「任せてオッケー! ばっちり人魚に戻すわん」

 ゾフィーが鱗だらけの手をエルザの胸元にあてる。そのまま魔法の様にゾフィーの手はエルザの胸に飲み込まれていってさ。ゾフィーは手を引き抜くとエルザの心臓を取り出したんだ。目映く輝く、宝玉の美しさを持つ人魚の心臓だ。
 それにゾフィーが一息吹き掛けると、心臓はたちまちエルザの胸に戻ったんだ。