薔薇とアリスと2人の王子


 その頃ルートヴィヒは。いくら呼んでも反応しないエルザに己の顔も蒼白させていた。

「エルザが……死んでしまった……」

 冷たいつめたい彼女の身体を抱きしめて声を漏らす。

「どうして、なぜ……僕は君を支えられなかったのか……」

 涙が海にポタポタと落ちて溶けていく。

「ごめんエルザ。何が辛かったのかは分からないけど、僕も一緒に、泡に還るよ」

 月が見た彼の顔はいっそ清清しいほどの笑顔を浮かべていた。彼の頬をまた一筋涙が伝ってエルザの瞼に落ちる。それでもエルザは目を覚まさない。それをルートヴィヒは絶望的な気持ちで見下ろしていた。


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「もう、ルートヴィヒっていう男はどこかしらん?」

 夜の大海原を漂っているのはゾフィーだった。
 薄暗い海面の上では、なかなかルートヴィヒの姿を見つけられない。