薔薇とアリスと2人の王子

「なんだこの気持ち悪い女は。どこから沸いた」

 イヴァンは思いっきり軽蔑した目でゾフィーを睨んだ。

「いやん。お兄さん、冷たいのね。私が呪いをかけて人間の姿にした人魚が、泡になって死んだから迎えに来たのよん」

 アリスはハッ、とした。

「エルザのこと!?」
「そんな名前だったわね~ん」

 アリスは怪しいフェロモン魔女(ゾフィー)に、これまでの経緯を話したよ。
 泡になって死のうとしたエルザ。でも人魚に戻れる方法を知らないルートヴィヒがエルザが本当に死のうとする気だと勘違いして、助けに向かってしまったってね。

「私がエルザをさっさと人魚に戻せばいいのねん。任せてオッケー! ばっちりよん」

 そう投げキスをするとゾフィーは海を漂っていく。
 海の魔女も人魚の姿をしているらしく、軽々と尾びれを操って沖のほうへ向かっていった。ピンク色の髪がなんともミスマッチだよ。

「信用出来るのかしら、あの気色悪い魔女」
「大丈夫じゃない? 胸大きいし」
「あなたは人をどこで判断してるの、カール……」

 項垂れたアリスが願ったことは、無事にエルザが人魚に戻れることと、怪しい魔女・ゾフィーが余計な事をしないことだった。