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「なんだ、あれは」
イヴァンは暗い海を、瞳を凝らして見つめた。
真っ黒の海中に、何か白いものが沈んでいく。かなり沖の方でね。
「どうしましたイヴァンさん?」
「何か……沈んでいる」
「え?」
ルートヴィヒも視線を海に向ける。
すると確かに見えたんだ。淡い色が徐々に海に沈んでいくのが。
「――エルザだ!」
「なんだと?」
イヴァンが問う暇もなくルートヴィヒは叫ぶと、瞬く間に海中に潜って立派な尾びれで沖のほうへ泳いでいってしまったんだ。
虚しく水飛沫の音だけが残る。
「なんなんだ一体」
一人になってしまったイヴァンはアリス達の元へ戻るべく浜辺を歩き出した。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)