アリス達自身が何もしなくても勝手に身体は宙を浮き、ピーターの跡をついていく。
 谷底から流れてくる風を頬に受けながら、アリス達4人は戸惑いながら身体をピーターに任せていた。

「ピーター、もしかして君は亜人(あじん)なのかい?」

 所長室の中で仰天しながらこちらを見るフランツを見ながら言ったのはカールだ。
 ちなみに彼の隣を浮いている兄は空中浮遊の感覚が苦手らしく、気分悪そうに青ざめていたよ。

「よく分かったね、黒髪のずる賢いお兄ちゃん!」
「亜人って何よ?」

 足元の絶壁を見ないようにしながら、アリスが聞いた。少しでも下を見下ろしたら恐怖で失神しちゃいそうだもの。
 カールが答える。

「亜人っていうのは、人間と似て非なるものだよ。伝説の生物とかね」
「そう。ぼくは亜人の血が入ってるの。人間と半分こなんだ。パパからそれを聞いた5歳のころから空を飛べるの!」

 相変わらずニコニコ笑うピーターだ。