「……なっ!?」
アリスは息を飲んだ。
なぜって、絶壁の谷の間をピーターが身体ひとつで優雅に飛んでいたんだ!
「どういうこと?」
同じく窓から谷を覗いたイヴァンとカールも、驚きのあまり言葉を失っていたよ。
ピーターは栗色の髪を風に遊ばせ、まるで習慣のように――手を伸ばしながら宙を舞っていた。それは鳥のように自然に見えた。
「ピータァー!」
ウェンディの声にピーターがこちらを向いた。
「ね、お姉ちゃん! ぼく、本当に空を飛べるんだよ!」
ピーターはニコニコ笑って、また窓の淵に戻ってきた。そのまま窓の淵に腰を下ろす。
アリス達はなんと言えば分からないでいてね。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.777/img/book/genre1.png)