「・・・・もう1回ちゃんと言うから聞いてくれる? 山田大君」


山田大って・・・・。

嬉しい気持ちと、そのぶん本気なのが分かって、俺の背筋は緊張のあまりピーンと伸びる。

それを合図に先輩は話しだす。


「確かにハチに聞かれるまでは、チョコを渡そうって思ってたの。でも、そのあとからハチはヒーローになっちゃうし、好きって言ってくれなくなっちゃうし」

「いや、あれは・・・・。ホントすみません。俺なりの努力でした」

「いいのいいの、嬉しかったし。あんな失恋話したあとだからさ、私のこと考えてくれてるんだなぁって分かったから」

「そうっスか・・・・」

「うん」


てか、もうハチに戻っている。

そこがちょっとばかり悲しいけど・・・・でも、久しぶりに名前で呼んでもらえただけで幸せだ。


「それでね、ハチがちょっと離れていって、なんかこう・・・・胸がモヤモヤしだしたの」

「モヤモヤ、ですか」

「そう。それで、なんだろう? って思ってるうちにバレンタインが近づいて。気づいたらハチのぶんのチョコも作ってて」