「・・・・」

「・・・・」


しばらく沈黙が続く。

先輩のミルクティーも俺のも、缶にはまだ大半が残っているけど、冷めて湯気も立たなくなった。

話している間、先輩はほとんど缶に口をつけなかったし、俺も飲むのも忘れて聞き入っていたから。


考えろ、考えるんだ俺!

先輩のために今俺ができること。

なんでもいい、なんでも・・・・。


けれど、考えたところで何も浮かばす、時間が過ぎていくだけ。

先輩は俺が何か言うのを待っているようにも見え、何も言わないでと訴えているようにも見えた。

もう終わったことなんだからと、ハチは気にしないで、と・・・・。


「缶、冷めちゃったね」


先輩がぽつりと口を開く。

白い息が、雪の降る暗い空にほぅほぅと上ってすぐに消えた。


「私、そろそろ行くね。ごめん、私たちのせいでハチに寒い思いさせちゃって。また明日ね」


そう言った先輩はすっとベンチから立ち上がり、小さく手を振って帰っていった。

俺は、見えなくなる先輩の背中をずっと見ていただけだった。