「で、ここはどこだ?」

 サレンスの問いにレジィは即答した。

「王都ですよ、たぶん」
「多分ってなんだ? しかもどうしていきなり着いているんだ」
「えーと」

 レジィはじっと考えこむ。

「だって、僕、王都に来たの初めてだから、ここがほんとうに王都だかどこだか確信がないから。どうして、って覚えてないんですか?」
「ない」
「例のアレですか」
「だろうな」
「ふうん」

 レジィは立ち上がり、なぜかその辺に散らばっていた荷物を集めにかかる。

「うまく説明できないけど、王都にはやく行ったほうがいいってサレンス様がおっしゃって、それで<力>で近道したみたいです」

 作業を続けながら返事をする。

「私の力ではそんなことはできないはずだが」

 不審げなサレンスにもレジィは動じた風もないが、手が一瞬止まる。

「でも……、現実です」
「レジィ」
「はい」
「お前は、お前たちは私にいったい何を隠している?」
「隠しているって? 何をです」
「空っとぼけるんじゃない。私だって薄々わかる。いったい、私は何者だ?」

 サレンスの問いかけにレジィはまたも即答した。

「サレンス様です」
「だから」
「サレンス様はサレンス様です。それ以外の何だっていうんです? 力には恵まれているけれど、女癖が悪くて生活能力がなくて手のかかる人です」

 レジィのあんまりな言葉だったが、サレンスは腹を立てなかった。
 いつになく真剣な声音で彼の名を呼ぶ。

「レジィ」
「はい?」
「もう一度、言ってみろ。今度は私の顔をちゃんと見て、だ」

 レジィは顔を上げサレンスを見た。

「サレンス様は……」

 言いかけて口ごもる。青い瞳がじわりと潤む。

「すみません。許してください。でも言うわけにはいかないんです」

 あふれでる涙を拭おうともせずレジィはひたすら謝る。
 サレンスは大きくため息をついた。

「もういい」

 投げやりに言い放った。