「……」

 老人は、しばらく黙ったかと思うと──

バッ! と、脇に置いていた杖の先をベリルに突きつけた。

「……」
「なんの真似だ?」

 しかし、ベリルは老人の首元に剣の切っ先を突きつけていた。

「あ~ゴホン……」

 老人は気を取り直すように咳払いを1度して、ベリルをちらりと見る。

「腕はなまっていないようだな」
「取り繕おうとしても無駄だぞ」

 どうせ、『まだまだわしには適わんぞ若造!』と高らかに笑いたかったのだろうが、それもベリルには効果がなかったようだ。

「早く用件を言え」

 剣を仕舞いながらベリルはぼやいた。

「う、うむ……そうじゃな」

 老人は長老らしいキリリとした眼差しをベリルに向けた。