セシエルは、集落を出る際に妻のパドメにその事を伝えていた。

 彼女も同じ考えだった。

「私と子どもたちのために、彼が身を挺してあなたを守るなら。それは間違いだわ」

 戦士の妻となった身、いつ夫に死が訪れても受け入れる覚悟はある。

 集落を守るうえで彼女たちもまた、戦士なのだ。

 セシエルと同じようにベリルを見てきたパドメにとって、彼が友を見殺しにしない事を十分に知っている。

 だが、守る事とは違う。戦士として戦い死ぬ事に、彼を憎む要素など何1つありはしないのだ。

「あなたが生きて返ってくる事を、私は祈っています」

 パドメは最後に、柔らかな笑顔で静かにそう言った。

 セシエルは、いつものように優しい笑顔を返し彼女を抱きしめる。


「……」

 そんな事を思い起こし、セシエルは目を閉じた。