数ヶ月ほど前に突然、王国に現れたドラゴン。

 あれほど巨大で強力なドラゴンが、人間界に現れるなんて……

 神に近いとされるドラゴンは本来、人間界に現れる事は無い。

 国を脅(おびや)かせる程のドラゴン。

「たった1匹のドラゴンに、本当に国が滅ぼされるんだろうか」

 そうならないために、討伐隊を編成した訳だが。

 そういえば、ベリルはぼそりと言ってたな。

『あれは、神に近いドラゴンではないよ』

 あいつはドラゴンについて、よく知っているようだった。

 体長は10~15mほどで、赤いウロコを持つとか。

 討伐隊に選ばれる確証すらなかったハズなのに、ベリルは独自に調べていた。

「もしかして……選ばれなくても、ドラゴン討伐に行く気だった?」

 雑用でもなんでも、彼は討伐隊に加わる気でいたのかもしれない。

「あいつらしいよな」

 セシエルはクスッと小さく笑った。