そんな噂も、彼の耳には右から左。好きなように考えればいい。

 そのあっさりした態度と変わった口調から、彼と集落の者ともめる事もあったが、彼に勝てる者はおらず、そうこうしているうちにいつの間にかうち解けてしまう。

 そういう不思議な部分も彼は持っていた。

 何より、彼らが目を見張ったのは高い戦闘力だった。

 流浪の民は戦闘に長け、『彼らに適う者無し』と言わしめるほどの民族だ。

 その彼らでさえ、ベリルの戦闘センスには感心した。小柄な体格を活かした戦い方で、力任せというより繊細な攻撃だ。

 猫科の猛獣を思わせる、流れるような動きに見惚れてしまう。

 言い寄る女性も多いというのに、彼はまったくもって恋愛に興味は無いようだ。

『そんな感情は母親の腹の中に置いてきた』と、でも言いそうだ。

 そんなこんなで、ベリルは長老の呼びつけで集落に戻る事となった。