彼らは生き抜く力をその子に与える。死ぬだけの命を認めない。

 旅の中に身を置く彼らは、息づく生命を決して軽視しない。

 全ての生命には意味があり、軽視する事は己の命も軽んじる事だ。と彼らは云う。

 ヴァラオムはベリルに目を細めた。

[……]

 この者は、それを肌で感じているのだ。

 人を惹き付ける存在感も持ち合わせている。なんと不思議な人間……ドラゴンはベリルに興味を持った。


[そうだ……奴は本当に不思議な人間だ]

 ヴァラオムは岩山の頂上で、星空を見つめてつぶやいた。

 私に臆(おく)する事もなく、ただ静かにそこに佇(たたず)んでいる。

 人語を話すという事は、魔法も持ち合わせているという事だ。

 相手が敵対的だった場合、魔法の攻撃を受ける可能性だってあるというのに。

 ヴァラオムは酒を飲みながら、その事を彼に尋ねてみた。

 するとベリルは、しれっとこう応えた。