人影はベリルを一瞥(いちべつ)したあと、すいと右手を岩山の頂上に向けた。

「この先に何がある?」

 透き通った声で尋ねた。声色からして男性と思われる。

 物腰はベリル同様に上品だ。

「それは自分で確かめろ」

 ぶっきらぼうに答える。すると、金色の目はぴくりと動いた。

「ではさらに問う。その剣は飾りか?」

ベリルの腰に下げられた剣を指さした。

「それは見る者、関わる者次第だろう」

 ベリルはさらりと答えた。彼は初めから、問答をかけられている事に気付いていた。

 金色の瞳を、少し嬉しそうに細めた。

「さらに問う。ここにいる訳は」
「そんな事は知らん」

「……」

 その答えに、ローブの男は少し沈黙した。

 まさか、そんな言葉が返ってくるとは思っていなかったようだ。