今にして思えば、あれは迎えが来るのを待っていたのだろう。

 もしかすると、親が途中で思いとどまり迎えに来るかもしれない。

 そんな期待を長老はしていたのかもしれない。

 ベリルにはそこから先の記憶は無い。親がいたのかも、本当に捨てられたのかも解らない。

 だから、悲しむ感情も無い。

「……」

 テーブルにコップを置き、肘を突く。足を組んでカタカタと小さく音を立てる窓から、夜の街を眺めた。

“チャラ”

「!」

 首にかけている角笛に手が触れた。それを手に取り、怪訝に見つめる。

「……」

 彼は、なんだってこんなものを?


 そして、彼との出会いを思い起こした。