5歳の時から、2人は仲が良く気が合っていた。

「拾い育ててくれた事には、感謝しているがね」

 薄手のマントを羽織りながら、ベリルはつぶやく。

 彼は3歳の時、長老に拾われ育てられた。流浪の民の中には、捨てられていた者も多くはない。

 そんな彼らを集落の人々は連れ帰り分け隔て無く慈しみ、育ててくれる。

 旅の途中で女性と出会い妻として連れ帰る者もいて、血が濃くなる事もなく集落は繁栄を続けていた。

 ベリルには3歳以前の記憶が無い。どこかの町で1人でいた処を、長老が見つけ集落に連れ帰った。

 自分が何者なのか、親はどういう人物なのか……ベリルにはさして興味はなかった。

 彼には未来が重要であり、過去の自分など関心に値するものではないからだ。

 彼の口調から、どこかの地位ある子どもかもしれない。と、考えた者もいたが。

 地位のある者が子どもを捨てるような事をするだろうか?

 むしろ、その地位のために捨てざるを得なかったのかもしれない。