「うわー! ベリルっ」
「いいから走れ!」

 セシエルは叫びながら馬の足を速める。森の中で出くわしたのは、ジャイアントワーム。

 巨大なイモムシを思わせる外見のモンスターだ。

「デカイ分、足が速く感じられるが所詮は芋虫だ」

「でっでも、でっかい牙があったぞ!」

 遠ざかるワームを、ちらちら振り返りながらセシエルは目を潤ませる。

「当り前だろ。奴らは肉食なんだから」
「平然と言うなよ!」

 森を抜け、速度をゆるめる。ベリルはニヤリと笑ってセシエルを一瞥した。

「相手がワームで命拾いしたな。アントだったら戦わねばならなかった」

「蟻!? デカイ蟻がいんのかっ!」

 俺には旅は向いてない! セシエルは心の中で大泣きした。