翌朝──

[気をつけてな]
「ああ。お前も」

 別れようとしたベリルに、ヴァラオムは手にすっぽりと収るほどの小さな角笛を渡した。

「?」
[大切な友に贈り物だ]

 ヴァラオムはそれだけ言うと飛び去った。

「なあ……」
「ん?」

 ベリルは角笛を首にかけながらセシエルに目を向けた。

「彼に、一緒に来てくれるように頼めないのか?」

 ドラゴンがついてれば心強いのに……セシエルの問いかけに、ベリルは目を伏せて首を横に振った。

「彼らに私たちの領域に踏み込む事を強いる事は出来ない」

「でもっこれは人間だけの問題じゃないだろ?」

 ドラゴンは全ての命に分け隔て無く死を与える。

 それを考えれば、人間以外の種族にも協力を要請してもいいのではないだろうか。

「そうだな……だが、人間との隔たりは大きい。簡単には協力してくれんだろう」