ベリルたちは森を抜け山を越え、いくつもの街や村に立ち寄りながら王都へ向かう。

 集落を旅立って10日ほどが過ぎた。ここまでは順調に進んでいる。

 この先も順調であってくれよ……セシエルは心の中で祈った。

「!」

 目の前にそびえる岩山。発つ前にベリルが言っていた岩山だ。

 確かに、緩やかな傾斜があり険しくはなさそうだった。

 巨大な岩が2人を歓迎するように、道なりに並ぶ。

「今日中にここを抜ける事は出来んな」

 ベリルがつぶやく。旅にも随分慣れたセシエルは、驚く事もなくその言葉に頷いた。

 岩だらけの山に植物の生える余地は無い。殺風景な景色にセシエルは眉をひそめた。

「!」

 ベリルは何かを確認すると、馬の足を止めて降りた。

「! どうしたんだ?」
「今日はここで終わりだ」