本当は行かせたくはなかった……杖を持つ手が震える。

 それでも、国王の命とあらば誰かを選ばねばならない。

 ならば、最もドラゴンを倒す可能性の高い者を選ばなければ……

「1人では困難な事も、仲間がいれば新たな道筋が開けようぞ」

 老人は、見えなくなるまで2人の影を見つめた。


 セシエルとベリルは馬の背に揺られ、平原をゆっくりと進む。

 空には鷹が旋回し、小高いここからは点在している森が眼下に広がる。

 ベリルは目の前の森を指さし、

「夜は森で過ごす。平原は返って危険なのでね」

「えっ! そうなの!?」
「……」

 セシエルの語気に、ベリルは眉をひそめた。

「そうしてたのか?」
「知らなかった」

「よく無事だったな」

 ベリルは薄く笑った。