早朝──ベリルとセシエルは馬に荷物を積み込む。

「王都まで近道を行く。途中に何もなければ1月もかからないだろう」

「嫌な事言うなよ……」

「別に、あのドラゴンだけがモンスターじゃないんだぞ」

 ベリルは口の端をつり上げる。

「それを言うなって」
「途中、岩山を越えるが険しくはない」

 少しずつ、人が集まってくる。

「ベリル」
「!」

 サナがベリルに何かを手渡した。

 それは一房の髪の毛と剣。特命を持ってきた兵士のものだ。

「彼の家族に渡してあげて」
「解った」

「僕に、癒しの民の力があれば……」

 サナは苦い顔をする。

「お前は力を尽くした」
「うん」

 サナの肩を軽く叩く。

「ベリル」
「なんだジジイ」
「おまっ長老さまに向かって」

「その口の利き方。今度教育してやる」
「やれるものならやってみろ」