「しかしよ。なんだってドラゴンはこの国に腰を落ち着けたのかね」

 セシエルが柵に体を預けて問いかけた。

「さあな。本人に聞かない事にはわからんよ」

「そりゃそうか。いつ発つんだ?」
「武器が完成したら」

 量が多いため、鍛冶師は弟子と2人でこもりきりになる。

 それでも、10日はかかるだろう。

「何もボルト(クロスボウの矢)までミスリルにしなくても……」

「ミスリルは魔法を乗せやすいんだ」
「! 武器に魔法を付与するつもりか」

 ベリルは柵に片肘をつき、

「マジックウェポンとする事は出来ないが、一時的に乗せる事は可能だ」

 そうでなければ、ドラゴンの硬いウロコを貫くことは困難だろう。

 普通の武器では到底、太刀打ちできるとは思えない。

「目や口の中にぶち込む事が出来ればいいのだがね」

 ベリルが薄く笑って言った。

「そんなの無理に決まってる……」
「だから、魔法の付与がいるのさ」