「!」

 見上げると、監視塔にセシエルが立っていた。

 ゆっくりはしごを上る。横に立ったベリルに目も向けず、セシエルはささやくように口を開いた。

「ドラゴン1匹で国が滅びるなんてな……」
「このままでは、それが現実となる」

 監視塔から遠くの森を眺める。

「飛べるってのはいいもんだね。こんな辺境の地にまで、ドラゴンの影がかかってきた」

 セシエルは皮肉混じりにつぶやいた。

「断る事も出来るのだぞ」
「!」

 ベリルは視線を落とした。それに、セシエルは目を細める。

「妻と子の事を考えてくれるのは嬉しいよ。でも、お前が独り身だから選ばれた訳じゃないだろ」

「それは……そうだが」

「選ばれた事を誇りに思うよ。お前のサポート、喜んでさせてもらう」

 セシエルは、輝くような微笑みをベリルに向けた。