ベリルは腰から短剣を取り出した。ドルメックから渡された、クリスタルのはまった短剣だ。

「これを媒体にすれば、面は線となる」
「? ……あっ! そういう事」

 しばらく悩んでいたマルタはようやく理解した。

 彼女の力は広範囲に衝撃を与えるもの、しかしそれではドラゴンの硬いウロコは貫けない。

 しかし、その力をそのまま細い刃とすれば……マルタは短剣をわしづかみにして走り出した。

 そして、エナにエメラルドのブレスレットを手渡す。これもドルメックからもらったものだ。

「彼女を頼む」

 ベリルはユリエスとエナの2人に言った。

「任せて」
「おう!」

 そう言って2人は、先に駆けていったマルタを追う。

 セシエルとパンパスの姿に、兵士たちは声を上げてドラゴンに武器を構えた。