「うおん!」
「セツキか。元気そうだな」
「こんにちは」

 雪狼の背に乗るレジィがベリルに挨拶した。

 ベリルはそれに手を軽く上げて応える。

「なあおっさん!」
「ひーくん! いい加減に名前で呼びなよ」

 うずらのキクが緋色羽(ヒイロウ)の頭のうえで、説教混じりに声を張り上げた。

「ええ~」

 めんどくさそうに応えるヒイロウ。

「……何故、歩いている?」

 ベリルが、歩いているヒイロウに眉をひそめた。

「馬なんて乗らなくても俺、平気だも……ん!?」

 ベリルはヒイロウの首根っこを掴むと自分の馬に乗せた。

「体力を温存しておけ。無駄に力むな」
「……ちぇ」
「ひーくんは元気過ぎて……」

 ヒイロウはベリルの前で馬の背に揺られながら、辺りを見回した。

「それにしても、すっげー一杯の人間がいるんだな」