半身をドラゴンの炎のブレス(息)に焼かれ、助かる見込みは無い。

 サナの治癒の魔法をもってしても、ここまでドラゴンのブレスを浴びてはどうしようもなかった。

 出ていた女性が戻ってくる。彼女はサナの助手だ。

 手には綺麗な布。兵士の傷をくるむためのものだろう。

 止まらない血で、巻かれている布は真っ赤に染まっている。

 布を取り替えようと、女性は兵士の体に触れた。

「あっう……」

 痛みで兵士は目覚めた。

「! あ、あなたは?」

 兵士はベリルに気が付いて、彼に問いかける。

「……」

 ベリルは兵士の側に近づくと、静かにしゃがみ込んだ。

「討伐隊に選ばれた者だ」

 それを聞くと、兵士はうめきながらも歓喜の声をあげた。

「お、おお! あなたが……たっ頼みます、国を救ってください。あの、豊かで平和だった王国を……」

 必死でベリルの手を取り、訴えるように語り続けた。見ると、まだ若く30代ほどだった。